築80年の田舎造りのお家。台所を中心に居室など全面的にリフォームされました。今ではなかなかお目にかかれない昔ながらのお家で、立派な梁や大黒柱があります。その木のぬくもりを残したいというご希望のもとリフォームは進められました。
玄関の建具をアルミサッシの引戸に取替え、一部増築したところにも断熱サッシを取り付けしました。
以前は木製の引戸で敷居を跨がなくてはなりませんでしたが、サッシにすることにより敷居をなくし、段差のない入り口になりました。和洋折衷なデザインにしたので古風な趣の中に、斬新さがある住まいになったのではないでしょうか。
玄関~居室(客間)
以前は玄関部分は応接セットを置いた広い土間でした。その土間の空間を利用してキッチンのスペースを広げました。
また敷居があり、取ってしまうことも検討しました。でも家の構造上必要なものだと判断して残しています。そしてできる限り段差をなくすように床を上げ、居室への上り下りがスムーズになるようにしました。
玄関を入ってすぐの収納はお施主様のこだわり。木目が美しい栃の木を使用したカウンターと扉には杉の木を使用しました。家具屋さんと何度も打合せをしたそうですよ。カウンターは長めにしてちょっと手を掛けられるようにしているのがポイント。
また、上がったスペースにもたっぷり入る玄関収納を据えました。
玄関横の居室はさくらの無垢材のフローリングにしました。(玄関もおなじ。)柔らかな印象のさくらの木目はとっても上品で美しいです。建具や障子は材木に詳しいスタッフと相談してデザインしたもの。壁も作り、客間として落ち着いた部屋ができました。
日本家屋特有の深い軒先(出桁軒)をそのまま利用し、ご希望だった縁側を増築しました。深い軒を支える出桁梁、化粧垂木を磨いて室内の天井として美しく、ゆとりの空間ができました。
物干し竿も取り付けられ、雨の日も気にせず干せて大活躍しそうですね。また断熱性・気密性の高いサッシも取り付け、その効果を実感しているそうです。
キッチン~ダイニング
25年前にも一度リフォームをしたという台所は6畳でした。年月を経て、使い勝手の悪くなった台所に憧れの対面キッチンを採用し、玄関の土間部分をキッチンの一部に広げたのでゆったりとしたスペースができました。
20cm床を上げたため、天井との距離が近くなるので天井を外すことにしました。昔の土間でかまどで料理をしていたことも考えるとすすだらけではないかと心配しましたがこの通り!きれいに洗い出され、年月を経て味のある色に変化した梁がお目見え。開放感ある台所になりました。
以前のように天井を張って、構造が見ることができない家が多い中で、こうして見られるのは貴重なのだとか!
玄関土間部分を広げたスペースには収納も設けました。左に天井まで伸びている柱が大黒柱です。なんて太い立派な木。黒光りしてつやつやしていました。
リビング~居室
台所の隣はリビングでもある和室。洗面所の位置を縁側に移し、サッシも取替えました。
こちらの敷居も玄関と同じように、構造上必要なものと判断して残したものです。
リビング~洋室(客間)も建具を開ければそのまま広い空間として利用できるようにしています。
奥の寝室でもあるお部屋は畳からフローリングにし、写真右側を建具から壁仕切りに変えたので落ち着いた空間になりました。
この建具の裏側は実は厨子(つし)2階に上がる階段部になっていて、2階からの冷たいすきま風があったのではないでしょうか。これで断熱効果もUPですね。
建築家もびっくり。
こちらの屋根裏は、今ではなかなか
お目にかかれないのではないでしょうか?
立派な木で組まれた小屋組!登梁を
使用して空間を広くしているそうです。
厨子の2階の窓は虫籠(むしこ)窓が
一般的と言われますが、こちらでは
引き違いの格子模様の窓が入って
いました。
時代の流れに応じてのことでしょうか。
■Point! ~ここがひと工夫~
玄関天井には屋根裏に繋がる開口部がありました。使用することがないのでそれを隠すために、長年使用していたついたてのデザインを利用して素敵な装飾ができました。うまくひっかける構造にし、きちんと取り外し可能なようにしているんですよ。
そして大黒柱の横にあった建具も客間の一角に移設。障子の戸袋にうまく収まるように調節しました。
こんなひと工夫も施工中にみんなで試行錯誤しながらなんだとか。現場を見ながらでないと判断しにくいのがリフォームの難しいところ。でも思い出のつまったものは出来る限りどこかに残したいという思いはみんな同じ。
ますます味の出る木の住まい。素敵なお家に生まれ変わりました!